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006 経済産業省「営業秘密管理指針(改訂版)」の公表

1.はじめに
 企業が有する技術情報やノウハウなどの知的財産を保護する手段としては、主に特許法による保護と不正競争防止法による保護が挙げられます。しかし、特許を取得することで保護されるのは、「発明」に限られ(特許法29条1項)、しかも発明内容は一般に公開されてしまいます(特許法64条1項)。したがって、「発明」には該当しないようなノウハウや、公表せず社内に留めておきたい技術情報などは、不正競争防止法上の営業秘密(法2条6項)としての保護を検討しなければなりません。

2.営業秘密
 不正競争防止法に規定されている「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報であって、公然と知られていないもの」をいいます(法2条6項)。すなわち、営業秘密とされるためには、①秘密管理性、②有用性、③非公知性の各要件を満たす必要があります。
  営業秘密の不正取得、使用、開示行為は不正競争行為とされ(不競法2条1項4号ないし9号)、これらの行為を行った者に対し、民事上、差止め、損害賠償、信用回復措置の請求ができます。
 また、営業秘密侵害罪(不競法21条1項1号ないし7号)が規定されており、刑事上も営業秘密が保護されています。これらの罪の法定刑は10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金となっていますので、決して軽くない犯罪といえるでしょう。なお、留意したいのは、法人処罰規定の存在です(不競法22条)。すなわち、法人等の代表者、代理人、使用人、その他の従業者が、当該法人の業務に関して営業秘密侵害罪を犯した場合は、その法人にも罰金刑が科される可能性があります。
  ただし、従業者等が営業秘密侵害行為に及ばないように適切に管理監督していた場合は、法人は免責されますので、営業秘密侵害行為の抑制という観点からのコンプライアンス体制を確立することが必要だといえます。

3.経済産業省「営業秘密管理指針(改訂版)」の公表(平成22年4月)
 平成21年4月の不正競争防止法改正により、上記刑事罰の内容が明確化されたことを契機に、経済産業省は従来の営業秘密管理指針を改訂しました。この改訂版は、①改正法における処罰対象行為の明確化、②事業者の実態を踏まえた合理性のある秘密管理方法の提示、③中小企業を始めとしたこれから秘密管理体制を構築しようとする事業者にも実践的に使いやすい参照ツールの提示、を主眼として編集されています。
 前述した、営業秘密の成立要件の一つである「秘密管理性」の存否については、判例が蓄積しており、概ね(ア)情報の秘密保持のために必要な管理をしていること(アクセス制限)、(イ)アクセスした者にそれが秘密であることが認識できるようにされていること(客観的認識可能性)という要素を考慮し、個別具体的な事件において合理性のある秘密管理方法が実施されていたかどうかを総合的に判断するという手法が採られています。しかし、どの程度の管理をしていれば「秘密管理性」が肯定されるのかは明確ではありませんので、事業者としては、営業秘密の保護を受けるためにある程度徹底した秘密管理方法の実施が望まれます。
  この点、同指針の参考資料である「営業秘密管理チェックシート」により、事業者の秘密管理体制を点数化することができ、その他にも、事業者の就業規則・営業秘密管理規程・秘密保持契約書等のテンプレート、情報管理に関する各種ガイドライン、管理体制の導入手順などが用意されています。
  これらの資料は、全て実施しなければならないという性質のものではありませんが、企業の営業秘密管理体制を確立する上で有用なツールとなると思われますので、参考にしていただければと思います。

※経済産業省「営業秘密管理指針(改訂版)」の公表~事業者の価値ある情報の管理方法等を解説!~  http://www.meti.go.jp/press/20100409006/20100409006.html


(弁護士藤谷護人)