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005 インターネット上の言論とプロバイダ責任制限法

1.平成22年3月15日最高裁判所決定
 平成22年3月15日、最高裁判所は、ネット上の記事が刑事上の名誉毀損罪にあたるとして立件された事件について、有罪とした第2審を維持し、上告を棄却しました。
 この事件では、第1審が無罪判決を言い渡し、その理由の中にインターネットの表現行為は、他の表現手段・メディアとは異なる判断基準(緩い判断基準)を用いるべきであるとしたため、話題になりました。しかし、最高裁の決定は、インターネットと他の表現手段との間を区別せず、前者を一律に緩い基準とすることに合理的な理由はないとしたのです。
 他方、インターネット上の掲示板における書き込みによって、発信者が業務妨害罪等で逮捕されたとの報道がたびたび紙面を賑わせています。
 これまで何かと見過ごされてきたインターネット上の言論に対して、司法が一定の秩序を求めるようになってきています。

2.民事上の責任追及
 上記決定は刑事上の問題でしたが、民事上の責任追及も広がってきています。
 東京地裁判平成9年5月26日のニフティサーブ事件を皮切りに、インターネット上の発言や記事が民事上の名誉毀損にあたるかがたびたび争われるようになりました。同時に、インターネットの特徴である匿名性が、被害者の損害賠償請求にとって、大きな壁となっていました。

3.プロバイダ責任制限法
 この問題に対処すべく、平成13年11月22日、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(いわゆる「プロバイダ責任制限法」)」が成立し、同月30日に公布されました。
 プロバイダ責任制限法は、その名称のとおり特定電気通信役務提供者の損害賠償責任に一定の制限を設ける一方で、同時に、被害者が名誉毀損的な記事によって権利を侵害されたときには、「電気通信役務提供者」に対して、記事を記載した発信者の情報を開示させることを目的とする法律です(プロバイダ責任制限法(以下「法」という。)第1条)。具体的には、法第4条の規定により、発信者情報開示請求権が認められることになりました。
 ここで言う「電気通信役務提供者」とはプロバイダだけでなく、掲示板を設置するサイト運営者や、ブログを提供する運営者も含まれます。
 また、当初「電気通信役務提供者」にはいわゆる経由プロバイダは含まれないとされていました。しかし、徐々に実務によって経由プロバイダも「電気通信役務提供者」に含まれるという解釈に変更され、平成22年4月8日に最高裁判所の判決で、経由プロバイダも法第2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当すると判断されたことにより、この問題は決着をみました。
 これにより、インターネット上の匿名性を犯罪行為や不法行為の隠れ蓑として利用することには、大きく牽制が働くようになりました。

4.インターネットリスクへの意識
 商用インターネットサービスが開始されたのが1995年で、わずか15年しか経っていないにもかかわらず、インターネットは、現在ビジネスの上でも無視することができないツールです。今やネット上でのみビジネスを展開する企業・ストアは珍しくありません。また、口コミという言葉がありますが、近時は「ネットコミ」が大きな影響力を持っている分野もあります。
 上記のような司法の流れは、インターネットが既に社会において重要な位置を占めていることを司法が強く認識し、一定の秩序・ルールが必要であると認識しつつあることの現れといえるでしょう。
 企業は、インターネットの持つ集客力を意識すると同時に、そのリスクについても関心を抱くようにしないと、足下をすくわれるおそれがあります。
 企業は、アンチサイトや掲示板上の業務妨害的な記事等の存在を意識し、時には捜査機関や弁護士などと連携し、時には対抗言論の手段を用意するなど、常日頃から対処法を考えておく必要があるでしょう。

(弁護士藤谷護人