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003 「労働契約法」について

1.「労働契約法」とは
 平成20年3月1日から施行されている労働契約法は、使用者と労働者の間の労働契約を規律するものです。規律のあり方として、従来から判例等によって確立されてきた労働者(たとえ「請負」や「委任」の形式をとっていても、実態として使用者の指揮命令のもとに働いていれば「労働者」です。)の保護を基調としていますから、使用者たる企業としては、労働契約の締結・変更・終了の各場面で、法の趣旨に則った実務を確立しておかないと、後から行為の効力を否定されるなどして、思わぬ不利益を被ることがあるので、十分な注意が必要です。

2.労働契約締結の場面
 一般の契約と同じく、労働契約も使用者と労働者の合意によって成立します(第6条)が、詳細な労働条件まで、いちいち契約で個別に定めることは実際的でないので、使用者は就業規則によって統一的な労働条件を設定することができます。
 注意すべきは、就業規則があっても、労働者に周知されていないと(管理者の机の中にしまわれているような場合)、その内容は労働条件と認められないことです(第7条)。また、法令や労働協約に反する場合(第13条)はもちろん、合理的とはいえない内容の就業規則も、労働条件とは認められません。また、就業規則とは別に個別に合意された労働条件については、できる限り書面にしたうえで、十分な説明をして労働者の理解を深めるようにする必要があります(第4条)。

3.労働契約変更の場面
 いったん締結された労働契約を変更する場合も、個々に合意する(第8条)ほか、就業規則の変更によることが可能です。ただし、就業規則の変更による場合は、個々の労働者の意思が直接には反映されないため、使用者が一方的に労働者の不利益に変更することは、原則として許されません(第9条)。
  もっとも、そのような変更も、状況によっては必要性が認められることから、①労働者の受ける不利益の程度、②労働条件の変更の必要性、③変更後の就業規則の内容の相当性、④労働組合等との交渉の状況、などに照らして変更に合理性が認められる場合には、例外的に許されます(第10条)。この判断の中では、不利益に対する代償措置(賃金の減額の代わりに定年を延長するなど)、我が国社会の一般状況(同業他社や社会一般の賃金水準など)なども考慮要素とされますが、特に賃金や雇用期間などの重要な労働条件の切り下げについては、かなり厳しい判断となることには、注意しておくべきでしょう。

4.労働契約終了の場面
 使用者は、企業秩序を維持し、業務の円滑な運営を図るために、労働者に対して懲戒を行うことができます。しかし、懲戒は労働者に対する不利益そのものですから、解雇に至らないものでも、適正なルールに依らせるべく、懲戒の種類及び程度について就業規則に記載しておくことが必要(労働基準法第89条)です。また、記載があっても権利濫用と認められる懲戒は無効となります(第15条)。例えば、単純なミス一つで数か月の停職などという懲戒は、行為と制裁のバランスを欠いたものであり、権利濫用というほかありません。
 解雇は、懲戒として行う場合であっても、労働者の生活の糧を奪うものですから、最も注意が必要です。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、無効となります(第16条)。裁判例には、寝過ごしにより放送事故を起こしたアナウンサーを解雇した場合や、成績不良の労働者を善後策を講じることなく解雇した場合など、解雇無効とされた例が多数あります。たとえ懲戒解雇の事由がある場合でも、段階的に軽微な懲戒から始め、改善のための努力と解雇に向けた警告を合わせ行いながら進めるなど、手順としても慎重さが必要です。特に整理解雇(いわゆる「リストラ」)は、労働者自身には非がない場合に行われるものですから、なおさらです。

(弁護士藤谷護人)