header header 弁護士法人エルティ総合法律事務所
トップページ > 3分間法話 > 3分間法話002 

002 企業にとっての裁判員制度

1.裁判員制度開始
 平成21年5月21日、いよいよ「裁判員制度」が始まりました。そもそも裁判員制度とはどういうものかについては、皆様も大まかにはご存知でしょう。刑事裁判で一般市民が裁判官と一緒に、被告人が有罪か無罪か及び有罪の場合はその刑の重さを決める制度です。

2.有給?無給?
 企業にとって特に関係するのは、労働基準法第7条本文「使用者は、労働者が労働時間中に…(略)…公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。」です。裁判員は数日に渡り裁判所に行く必要があるため、企業は休暇を与えなければなりません。ただ、これは有給でなくてもいい。なお、当該従業員に対して年次有給休暇を充てるように命じることはできません。

3.裁判員を辞退してもらえるのか?
 裁判員候補者に対し、会社のほうから「辞退してくれ」と言うことはできません。上述の労働基準法第7条本文に抵触する危険があります。
 当該従業員自身は「やむを得ない事由」があると辞退できます。裁判員法第16条第8号ハは、やむを得ない事由として「その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること」と定めます。最高裁判所はこれを「個々のケースごとに、裁判所が、その用務の重要性、自ら行うことの必要性、著しい損害が生じる可能性等を考慮して、裁判員の仕事を行うことが困難であるかどうかを検討し、裁判員を辞退することを認めるかどうかを判断することになります。」と解説しています。
 つまり、単に「仕事が忙しい」というような抽象的な理由では辞退できません。「自分以外にはこの業務はできない、しかもこの業務が裁判期日の数日間でも滞れば会社に重大な損害が発生する」ということをかなり具体的に説明して裁判所を説得する必要があります。

4.誰が裁判員かは秘密にしなければならないとのことだが?
 従業員が裁判員候補者や裁判員になった場合、その従業員を特定する情報(住所氏名等)を公にすることは禁じられています(裁判員法第101条第1項)。ただ、それはインターネット上で公開する等、不特定多数人が知ることができる状態にすることをいいます。そのため、従業員が上司に裁判員になったことを話して休暇を申請したり、裁判所からの呼出状を上司に見せたりすることは問題ありません。なお、裁判員でなくなった後は、当該従業員が同意すれば公開することができます。

5.企業の対応における注意点
 上述2.の事情のため、企業は裁判員の仕事に従事するための特別休暇に関する規定を就業規則に定める必要があります。なお、出張や転勤については、裁判員法にそれを禁じる規定が無い以上、命じることは可能と考えられます。また、自社に派遣されている派遣労働者の場合、派遣労働者が休業することを拒否できず、派遣契約も解除できませんが、休業中の賃金支給の義務は無く、また、派遣元に対し他の派遣労働者を派遣するよう求めることができると考えられます。

(弁護士藤谷護人)